列島の考古学縄文時代

列島の考古学縄文時代の詳細

ページの大半がカラー写真であるのは良い点だと思います。考古学好きの一般市民は，綺麗な写真と縄文文化の解説でわかりやすいのではないでしょうか？それと，目次にもありますが，「ジェンダー」や「カタストロフィー」など比較的モダンなワードを用いて縄文文化を解説している点も，これまでの概説書とは異なって良いです。しかし，中味は割と古い発見と学説を文化史的に淡々と記述するだけです。ある程度考古学を学んだ人からすれば，これまでの研究に対し多角的アプローチや懐疑的視点をもたらすような概説書ではないです。前述しましたが，一般市民が縄文文化を知る上では縄文文化を社会・文化を体系的に記述している点で良い本だと思います。本書の中で，土器の文様は厳しい自然の中で安定した生活を求めるための呪術的行為で，縄文の祈りであったなどという記述がありますが，2011年になってまで概説書を出すくらいなら古臭い機能主義的記述は辞めるべきだと思います。もちろん，そう書いた方が一般受けしやすいんでしょうが・・・それよりも，新しく皆があっと驚くような研究成果と発掘成果を紹介するべきだと思います。例えば，縄文時代は遊動⇒定住といわれていますが，ある研究成果によれば縄文文化はむしろ遊動的に推移していくなど。